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「法廷占拠 爆弾2 呉勝浩」爆弾魔心理戦第二弾
法廷占拠 爆弾2 呉勝浩

法廷占拠 爆弾2 呉勝浩

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あらすじ#

史上最悪の爆弾魔が囚われた。
そのとき新たな悪が生まれた。

東京地方裁判所、104号法廷。
史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、突如銃を持ったテロリストが乱入し、法廷を瞬く間に占拠した。
「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放します」前代未聞の籠城事件が発生した。
スズキタゴサクも巻き込んだ、警察とテロリストの戦いが再び始まる!

感想#

今度はスズキタゴサクが法廷にて人質にされた状態で始まる連続爆弾事件と心理戦。今度はどうなる? 次はどうなる? と次々と面白かった。
いや~~それにしても柴咲、最終的にはタゴサクと類家の両方から心理戦仕掛けられる柴咲可哀想だろ。ちょっとこう……もうちょっと……優しさを……。

ネットを利用した人質拘束方法#

法廷にいる100人近くとタゴサクを人質に銃撃犯が立てこもった。またしても各所に仕掛けられた爆弾、爆弾を解除するための警察との会話と心理戦が繰り広げられる。

今回はネットのリアルタイム配信を利用した戦法が面白かった。
犯人グループらは立てこもりの人質たちが何かした場合、ちょうど運悪くそこにいて犯人に選ばれただけの倖田を殴ると宣言する。自分が殴られるわけではない、しかし目の前にいる人が殴られる恐怖に、人質たちは無茶が出来ない。
トイレに行ったりなどしても良いが、行く前にはネットで配信されているカメラの前で自分の本名を言わされ、なおかつ時間制限に間に合わなければ倖田が殴られるとルールを伝える。逃げたって良い。けれども逃げた場合、全世界に自分の顔と本名を知られた上で永遠に後ろ指をさされるハメになる。そんな状態で逃げられる人はいない。

この、人の心理を突いた人質を逃さない戦法が、本当に性格悪くて……。デジタルタトゥーは一生残る。よっぽどの金を積まないと消えない。そしてデジタルでは消えても人の記憶には残り続ける。
いまこの場を逃れられても、顔と名前が晒されたうえで逃亡したら、この先一般人として生きていくのはほぼ不可能。整形して名前を変えるぐらいしないと一生後ろ指をさされつづける生活間違いないし、ついでに言えば家族だって害は及ぶ。そんな状況で逃げられる人間はそうそういない。

本当に最悪に性格悪くて笑っちゃった。

……と思ったが、これ書いてて思ったけど被害者家族らにこいつがいますよと見せるためだな?

犯人との心理戦#

警察側は、法廷にいる人質たちの解放と、各所に仕掛けられた爆弾の場所とその解除を要求。犯人側は煙に巻くような会話を続けながら警察にあれこれと要求していく。その要求もすべてが配信で流され、犯人側はコメントを見ながら「あー刑事さん、いま刑事さんの好感度下がったね」などと品評をしてくる。
本来ならば犯人と警察官という少数vs少数の戦いのはずが、インターネットで好き勝手言う野次馬たちのお陰で、少数vs少数vs全く役に立たないが世論だのは元気に動かすオーディエンスたちという状況へと早変わりする。
別に誰に叩かれても構わないしこれだけの事件起こしたらぶっちゃけこの先なんてどうだっていい犯人たちと、この先も生きていくし自分がうまくやれなかったら最悪家族にも嫌な被害が及ぶかもしれない刑事。どう考えたって刑事のほうが心理的負担が大きい。

この状況下での心理戦をやり遂げた警察側はすごいと思うし、こんなストレスかかる状態で冷静に犯人がなにやろうとしているのか推理し続ける類家、ぶっちゃけどっかぶっ壊れている。いや、そういう人として元々描かれているんだけど。

1巻のスズキタゴサク相手よろしく、クイズのような心理戦を仕掛け、ストレスをかけ、爆弾の場所を匂わせていく犯人。絶対に失敗できない、失敗したら『ヒントを出されていたのに間違えた無能な警察』『犯人と交渉する機会があったのに失敗した無能』とレッテルを貼られる状況で、どうにか相手に主導権を握られすぎないように会話するのしんどすぎる。

そして元気なスズキタゴサク#

そしてこういう状況下だと元気そうなスズキタゴサクに笑ってしまった。確かにこういうの好きそう、こういう相手にお喋りしかけて場を取り仕切ってうまくやるの大好きそう。

スズキタゴサク、自分より社会的にも肉体的にも圧倒的に強そうな相手を話術で自分に屈服させたいという性格なので、世が世なら口先三寸でどうにかするタイプの少年漫画の主人公になれそうなやつだな……。ライアーゲームクソ強そう。

タゴサクが「あなたの心の形が知りたいんです」と柴咲にクイズを仕掛けだしたあたり、「いけ! タゴサク! やれ! タゴサク! メンタル的にめちゃくちゃにしろ!」とテンションあがってしまった。即座にタゴサクは伸されるが。
見てますか清宮さん、こういう口がよく回って面倒なやつの対処法はただ一つ、拳で黙らせることですよ、指を折る程度の生半可なものじゃなくて黙るまでどうにかすることですよ、と思ってしまった。清宮さん警察官だからそんなことしない。

終盤、犯人たち+タゴサク+人質の倖田の面子で逃走するときに、タゴサクがさり気なく車内を仕切りだしているのうまい。人心掌握がうますぎる。
ただこの人心掌握のうまさってただ場だけをうまく自分の好きな通りにする口のうまさじゃなく、警察がどのように包囲を作るか、どのように検問を仕掛けてくるかを考えるだけの頭の良さも前提にしたものなので、やっぱりスズキタゴサク頭が良いんだよな……。
この警察の包囲網や検問の場所について、タゴサクと類家が互いの思考を読む心理戦を始めているのに笑ってしまった。なんかもうこいつら、少年漫画のライバル関係っぽさがある。

タゴサク無事逃げおおせたので、今後どっかのタイミングで現れて類家とバトってほしいっすね。
それはそうとして、タゴサクの最後の爆弾は結局どうなったんだ。余韻のための一文なのか、それとも今後何か出てくるのか。

人間の選別#

前巻でも清宮がやらされた人間の選別を、今回は人質にされた面々が無意識のうちにやらされている。

倖田は殴られても刑事だからセーフ。仕事上自分たちを守るための存在だから、殴られたって普通の人が殴られるよりはマシだ。
タゴサクは連続爆弾魔なのでどうなってもセーフ。ここで撃たれて殺されても死刑が早まっただけ。

無意識のうちに『自分じゃないから』以外にも『他の人よりこの人なら』やっちゃってんのエグ~~~となるし、でも究極この話って『自分じゃなきゃ良い』『家族じゃなきゃ良い』ではあるしな……。
柴咲の目的自体が友人に金を渡すため自分はどうなったっていいし他の人もどうなったって良いの理論なので、最も大事なもののためならどうなったって良いの話なのかも。